Land-Based Aquaculture

「ワムシ」と葉物野菜の給餌による
「空ウニ」蓄養プロジェクト

 この喫緊の課題に対し、弊社は鹿児島大学水産学部の小谷知也教授との長年にわたる密な情報交換を軸に、大量廃棄される「空ウニ」を、独自の蓄養技術で身入りの良い高付加価値の食用ウニへと生まれ変わらせる陸上蓄養プロジェクトを考案しました。

クロレラを使った「ワムシ」の培養
ウニの蓄養風景

クロレラを使った「ワムシ」の培養と、ウニの蓄養風景

具体的には、磯焼け対策の一環として各地の漁協から廃棄される「空ウニ」を買い取り(または引き取り)、鹿児島県出水郡長島町の鹿児島大学の陸上施設で効率的に飼育(蓄養)し、高品質な食用ウニとして出荷するプロジェクトです。

そして、本プロジェクトの核となるのは、鹿児島大学の小谷教授との共同研究で確立した「ワムシ」を活用したウニ蓄養技術です。

「ワムシ」活用の効果とは何か

「ワムシ」は、従来、稚魚の養殖や水質浄化に利用されている動物プランクトンの一種ですが、弊社は、小谷教授の指導に基づき、(有)テクノフーズが開発したバクテリア群を用いて繁茂させた珪藻で「ワムシ」を培養し、これを無脊椎動物の二枚貝に給餌する実験を行い、その有効性を確認しました。

これは、小谷教授の実験でも追認が取れたことから、2025年に入り弊社は小谷教授と、同じく無脊椎動物のウニ(空ウニ)に従来の蓄養で使われる葉物野菜(農家で廃棄されるキャベツや小松菜などの未利用農作物残渣を利用)に「ワムシ」を加えた新たな給餌システムを適用した共同研究を行ったところ、2〜3週間という短期間で「ウニの身入り改善に大変有効」であるという実証結果が得られました。

餌に動物性タンパク質であるワムシを組み合わせることで、ウニの生殖巣(「身」の部分)の発達を飛躍的に促進し、高品質かつ濃厚なウニを短期間で育て上げることができたのです。

 弊社では、このウニの「蓄養」プロセスに、これまでの水産業界が積み重ねてきた経験と勘に加え、最先端技術でさらに最適化する取り組みを進めています。

陸上養殖における、かけ流し方式、閉鎖循環方式、閉鎖型システムといった様々な手法を比較検討し、ウニの生育に最適かつ効率的な水質管理や給餌方法を特定するための高度な調査を計画しています。

この調査には、科学技術の社会実装による、より進んだ世界の実現を目指す「株式会社バイオインパクト」との協働により、AI等を活用して膨大な環境データやウニの生育データを分析することで、最適な飼育環境や給餌管理プロトコルを実証的に導き出すことを目指します。

確立したワムシ活用技術をさらに発展

より少ない資源(水、餌、エネルギー)で最大限の生産効率を実現する、「持続可能」かつ高収益なウニの蓄養モデルの確立を目指します。

これは、単に蓄養を行うだけでなく、その手法自体をAIにより最適化するという「創意工夫」の試みです。
これにより、属人的な要素が強かった水産業の生産体制に、データに基づいた再現性の高い手法を確立し、安定した高品質なウニの生産と「事業の6次化」を図ります。

多角的な効果の詳細

持続可能な水産業への貢献

大量発生するウニを引き取り、「空ウニ」を有効活用することで、海の環境負荷を減らし、磯焼け対策の一助となります。
また、天然資源に依存しない陸上での「持続可能」な生産モデルを構築します。

AI活用による効率的なウニの蓄養は、資源利用の効率を一層高めます。これにより、従来の経験や勘に依存した手法から脱却し、客観的データに基づいた持続可能な水産資源管理と生産体制を構築します。

地域連携の強化と鹿児島の漁業の活性化

鹿児島大学の小谷教授との共同研究等を通じた「地域連携」により、事業拠点である鹿児島におけるウニ蓄養の技術開発、雇用創出、関連産業との連携を進め、「鹿児島の漁業の活性化」に貢献します。
また、ウニの供給元となる全国各地の漁協とも連携し、磯焼け対策と「空ウニ」の有効活用という共通の課題解決モデルを提示します。

また、2025年9月からは、鹿児島の「指宿地域」と連携し、「オニテナガエビ」の稚エビを仕入れて、エビ畜養の実証実験も同時に開始します。

多様な人材の雇用促進

陸上施設でのウニの「蓄養」作業は、従来の海上での漁業と比較して身体的な負担が少なく、作業環境も安定しています。

これにより、これまで水産業で活躍の機会が少なかった女性や、経験豊富な年配者の「再雇用」の受け皿となり、多様な人材の雇用促進と地域社会の活性化に貢献します。

新たな「6次化」モデル: 「空ウニ」の引き取り(1次)、陸上での蓄養・加工(2次)、飲食店への出荷・販売(3次)を鹿児島を拠点に一貫して行う、弊社独自の「6次化」モデルを推進

地域産業の多角化と雇用創出を目指します。また、生産されたウニの販売先として、既にその品質に対して評価をいただいている、浅草の老舗料亭「一松」や乃木坂の高級フレンチ 「オステルリー・スズキ」などを確保しており、今後は豊洲や築地への卸も予定するなど、確かな販売チャネルを構築しています。

資源の有効活用とフードロス削減

大量に廃棄されていた「空ウニ」に新たな命を吹き込み、付加価値の高い食用ウニとして供給することで、フードロス削減と資源循環に貢献します。

顧問:小谷知也教授

鹿児島大学学術研究院農水産獣医学域水産学系 教授

  • 1969年和歌山県田辺市生まれ
  • 99年長崎大学大学院海洋生産科学研究科博士課程修了。博士(学術)
  • 福山大学生命工学部准教授などを経て、2010年10月鹿児島大学水産学部准教授
  • 18年10月より現職

専門は、生物餌料、ワムシ、カイアシ類、仔魚で、海産魚類種苗生産における餌料系列の見直し、シオミズツボワムシの初期餌料以外の用途の開発などの研究に携わっている。